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現実エスケープ

第18章 本日は世界を求める(ただし、荷物は洗剤で)



 
「いいですよ。
 じゃあその『予定してた散策』、今度の休日にでもやり直します?
 俺が荷物持ちとして、アズサさんのガイド務めますから」
 
「は? なんであんたがまた私の最寄り駅に来る前提なわけ?
 迷惑。不法侵入」
 
「俺の元・庭ですから、不法じゃないです。
 それに、アズサさんの散策って放っておくと
 ドラッグストアで完結しちゃうじゃないですか。
 それ、散策じゃなくてただの『買い出し』ですからね」
 
「余計なお世話よ。私は一人の時間を楽しみたいの。
 あんたみたいな騒がしいガイド、無料でもお断り」
 
「無料じゃないですよ。
 ガイド料は、昨日みたいにアズサさんの食べたいものを俺が当てるたびに、金利一回免除でどうです?」
 
結城くんは満足げに紫煙を吐き出し、遠くの街並みを眺めた。
 
特別な約束も、期待も、歩み寄りもない。
ただ、週末の散策(という名の買い出し)が台無しだったとか、洗剤が重かったとか、そんなゴミみたいな話を共有しただけの、いつも通りの月曜日。
 
「明日も天気、いいみたいですね。散策日和なんじゃないですか?」
 
「雨でも降ればいいのに。
 結城くんのガイドマップが全部ふやけて読めなくなるくらい」
 
「俺のガイドマップはプレミアム仕様の防水加工してありますから」
 
そう言って彼は、短くなったタバコを携帯灰皿に放り込むと、軽く手を振って、屋上のドアの向こうへ消えていった。ガイドマップなんてないくせに。


……本当に、バカだな。

昨日は昨日で、知らなかった最寄り駅周りを見れて楽しかったのは事実だ。
あのピザ屋さんもまた今度行ってみようと思ってる。
    
いつも通り、口が裂けても言ってあげないけれど。

-end-
 
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