第16章 屋上の君主、シガレット
「弱点を教えるだけじゃ物足りないでしょ。
俺、トロコンしてますから」
「……は?」
「どうです?
今、目の前に、攻略動画より頼りになる同期が落ちてますけど。
俺がプレミアム仕様のプレイスキルで、そのボス、瞬殺してあげましょうか?」
彼は私の顔を覗き込み、いたずらっぽく続けた。
「ツケは、新作出たら次は最初から俺と一緒にプレイすることでいいっすよ。
なんなら、それ倒した後に『さすが結城くん(ハート)』って言ってくれるなら、隠し武器の場所まで全部エスコートしますけど」
私は一つ深いため息をつくと、ベンチにうつ伏せになった。
「却下。
あんたの手を借りるくらいなら、あと100回死んで、
自力で勝つわ。その方が100倍達成感あるし」
「流した!
せっかくの召喚のチャンスを完璧に流した!」
結城くんが「厳しいなあ」とぼやきながらも、
自販機で買ってきたであろう冷たい飲み物をベンチに置くのが見えた。
「気分転換の聖杯瓶だけおいときます」
……本当に、バカだな。
「助けてほしい」なんて言ってあげないけれど、休日に一人の部屋で画面に向かって絶望するよりは、この騒がしい同期の理論値全振りの解説を聞いている方が、ずっとマシになりそうだ。
やっぱり、口が裂けても、そんなこと言ってあげないけど。
-end-