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現実エスケープ

第16章 屋上の君主、シガレット




「あーあ、どっかに『反射神経が神レベルで、ボスの行動パターンを全部把握してて、私がコントローラーを投げ出す前に無言でコントローラーを奪い取って全クリしてくれる、攻略動画より頼りになるイケメン』、落ちてないかなあ」

いつもの屋上のベンチで、私は青空に向かって、
もはやゲームの攻略を他力本願で解決しようとする妄想を垂れ流す 。
 
YOU DIEDの文字を昨日だけで50回は見ただろうか。
私の精神的HPはもうゼロに近い。

「アズサさん、そんなニッチな条件のイケメン探してるんですか。
 それ、もう人間じゃなくてAIか何かですよ」

呆れたような声とともに、聞き慣れたライターの音がした。
横を見ると、いつものように煙草を吸いながら立っている 。

「いいじゃん、妄想なんだから。
 こっちはね、ひたすら同じボスにボコボコにされて、
 現実逃避してないとやってられないの」

「あー、この間セールに出てた、って勧めたやつですか。
 ほんとにやりだしたんだ。
 アズサさん、ああいうの向いてなさそうなのに」

「うるさい。推しがやってたの、思い出したから買ったの!
 今日は何?
 プレミアム仕様の優しさで、ボスの弱点でも教えてくれるわけ?」
 
私は寝転がったまま、彼を見上げる。
結城くんはふっと煙を吐き出すと、私の隣に腰掛け、いつものように不敵に笑った 。

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