第15章 付箋の金利
「これ、優しさじゃなくてただの闇金ですよね?
でもまあ、保険あると安心です。
俺もアズサさんの引き出しに『プレミアムな補充』しときましたから」
結城くんは満足げに煙を吐き出し、私の隣に腰掛けた。
「……プレミアムな補充? ただの1箱でしょ」
「いえ、今回は特別に、俺の『連絡先入りの付箋』を箱の裏に貼っておきました。
タバコ吸いたくなった時じゃなくて、俺の声が聞きたくなった時専用の、察しの良すぎるサービスです。
どうです? 今、めちゃくちゃ優しくないですか、俺」
「……何それ。シュレッダー案件なんだけど」
私は冷めた目で彼を見る。
実際、さっき自分の引き出しを開けた時に、見慣れた銘柄の箱と一緒に、見慣れないほど丁寧に書かれた電話番号の付箋が貼ってあった。
「で、その付箋代、いくら?
請求書、シュレッダーに捨てといていい?」
私が聞き返すと、結城くんは携帯灰皿をいじりながら、にやりと笑った。
「ツケでいいですよ。
アズサさんが、その番号に本当に電話をかけてくるまで、無期限で待っててあげます」
「そんな日、一生来ない」
「じゃあ、その番号の付箋が黄ばんでボロボロになるまで、俺のデスクの引き出しにアズサさんの銘柄を補充し続けてくださいね」
結城くんは楽しそうに笑いながら、先に社内へと戻っていく。
「補充、忘れないでくださいよ。
愛のメッセージ付きの付箋、楽しみにしてるんで」
……本当に、馬鹿だな。
次の付箋には、『広告お断り』とでも書いてやろう。
私はベンチに座り直し、自分のポケットに入っている結城くんの付箋を眺める。
いつか、暇で暇で仕方がない日に掛けてやるのも悪くないと。
口が裂けても、そんなこと言ってあげないけど。
-end-