第14章 メンテ中は別ゲーする
「で? 今日の押し売りは休業?」
「本日はですね……」
結城くんはゆっくりと立ち上がろうとして、途中でよろけた。
「あっぶな!? ちょっと、マジで大丈夫!?」
「大丈夫です……たぶん……HP1なんで……」
RPGか。
私はため息をつくと、自販機の方へ歩く。
数秒後、缶コーヒーを片手に戻る。
「ほら」
「……え」
「ポーション。回復薬、医療キット」
結城くんは缶を受け取ったまま、完全にフリーズした。
「……アズサさん、今、俺に優しくしました?」
「は? 応急処置。倒れたら仕事になんないでしょ」
すると、結城くんは缶コーヒーを見つめたまま、小さく笑った。
「……それ、反則ですって」
「何がよ」
「俺がいつもやってるやつ、逆にやられると普通に効くんですけど」
そう言って、缶を開けると、一口飲んで
次の瞬間。
「よし、完全復活しました」
「早っ!!」
さっきまでHP1だった男が、急にフルHPみたいな顔で立ち上がった。
「いやー! 助かりましたアズサさん!
これでまたプレミアム仕様の優しさ、フル稼働できます!」
「いらないから。メンテ中のアクセス不可にしといて」
「じゃあまず第一弾! そのコーヒーのお代は……」
「課金する財布はない」
「アズサさんが俺をタイプって認めるまで無利子で……」
「却下」
食い気味に遮ると、結城くんはケラケラと笑った。
私はベンチに寝転がり直しながら、空を見上げる。
「でもまあ、たまに回復してもらえるなら、悪くないですね」
結城くんが、さっきより少しだけ穏やかな声で言った。
本当に、馬鹿だな。
……ほんとに、私も馬鹿だ。
「私も、たまになら、悪くないかな」
口が裂けても、そんなこと言ってあげないはずなのに
つい、口に出た。
-end-