第14章 メンテ中は別ゲーする
「あーあ、どっかに『身長180センチ以上、顔は国宝級、私を世界一甘やかすためだけに生きてて、かつ常に万全のコンディションで優しさを供給し続けるメンテ不要のイケメン』、落ちてないかなあ」
昼下がりの屋上。
私はいつものようにベンチに寝転がり、もはや家電レベルの性能を求める妄想を口にした。
「……すみません、その製品、現在在庫切れです」
いつもなら即座に「ここに落ちてますよ!」と飛び込んでくるはずの声が、やけに弱々しい。
顔を上げると、そこにはフェンスにもたれかかりながら、明らかに電池切れの顔をした結城くんがいた。
「何その顔。充電切れ?」
「はい……昨日ちょっと徹夜で……プレミアム仕様、現在メンテナンス中です……」
ライターをカチッと鳴らすも、火がつかない様子だった。
本人と連動してるのかよ、と思ったけどそんなこと言う空気でもなかった。
「……あ、ガスも切れてる」
「ダメじゃん。完全に不良品じゃん」
空気読もうとしたばかりなのに、ついつい、いつもの調子で即座に切り捨ててしまった。
結城くんは「ひどい……」と呟きながら、その場にしゃがみ込んだ。
仕方なく、私が使ってたライターを投げ渡す。
結城くんは焦点の合わない目をしながら加えた煙草に火を灯した。
「いやでも……最低限の機能は残ってるんで……」
「何、その最低限って」
「アズサさんを視界に入れてニヤニヤする機能です」
「それ、最初からいらない機能」
我ながら完璧な正論。
だが、結城くんは反論する気力もないのか、ぼんやりとこちらを見上げてくるだけだ。
調子が狂う。