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現実エスケープ

第13章 猟師さん、狼がここにいます。




「厳しい! あんなにニコニコ聞いてたのに落第点かー!
 じゃあ、今日のツケの代わりに
 ……俺がアズサさんを無事に家まで送り届ける権利、ってことで」
 
「却下」
 
私はICカードを改札機に叩きつけながら、間髪入れずに即答した。
 
「えっ、秒殺!? 危ないですから!
 酔っ払いの送り狼から俺が守ってあげますって!」
 
「あんたが一番の送り狼になりそうだから。
 顔は整ってるかもしれないけどタイプじゃないし。
 私の家の方角、あんたの家と真逆でしょ。路線も違う。
 さっさと自分の電車に乗って」

我ながら完璧な一蹴。私は改札の向こうへスタスタと歩き出した。
 
「流した!
 せっかくの『夜道を家まで送る』っていうイケメンの王道イベントを完璧に流した!!」
 
結城くんが改札の外で「冷たいなあアズサさんは!」と嘆きながら、私のビジネスバッグを改札越しに手渡してくる。
 
「あーあ、拾うのはカバンだけ。
 俺のタイプのアズサさんは、いつになったら俺の優しさ、
 拾ってくれるのかなあ」
 
改札の向こうへ消えていく結城くんの、
お決まりの負け惜しみみたいな呟きが聞こえた。
 
……本当に、バカだな。
 
私はバッグを受け取ると、一人でホームへと続くエスカレーターに乗った。

いつか彼が、「スマートに家まで送ってくれるイケメン」に1ミリでも近づく日が来るのだろうか。

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