第12章 ヤキトリ
「俺、今こうしてアズサさんの正面に陣取って、
愚痴を聞く気満々なんですよ。
どうです? 今日も今日とて、俺、めちゃくちゃ優しくないですか?」
楽しそうに、自分に都合のいい解釈を並べ立てる同期。
相変わらず、私の妄想の条件を拾い上げるのだけは天才的だ。
「さっきも言ったけど、『奢り』の条件を満たしてないから失格。
今夜はきっちり1円単位まで割り勘だから。
はい、その点に関しての苦情は一切受け付けません」
私がピシャリと言い放つと、結城くんはレモンサワーを飲みながら、大げさに肩を落とした。
「厳しい!
そこはほら、俺の顔を見て『ありがとう、結城くん(ハート)』
って言ってくれたら、俺が男気見せて全額奢ったのに!」
「顔は整ってるかもしれないけどタイプじゃないって。はい、却下」
我ながら完璧な一蹴。
私は、追加で届いたねぎまの串に手を伸ばした。
結城くんが「せっかく奢るチャンスをあげたのに!」とブツブツ言いながら、焼き鳥のつくねを口に運んでいる。
文句を言いつつも、私のビールの空き具合を見て、店員に「すみません、生おかわり」と、私が頼むより早く注文を入れているのが、この男の本当にタチの悪いところだ。
……本当に、バカだな。
いつか彼が、私の言う「スマートに奢ってくれるイケメン」に1ミリでも近づく日が来るのかどうか。
まあ、割り勘で気兼ねなく愚痴れる今の方が、よっぽど気が楽でいい。
私は2杯目のビールが届いたら、結城くんのいつもの戯言を右から左へと流しながら、今日あった理不尽な上司の愚痴を、遠慮なくぶちまけようと思う。
-end-