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現実エスケープ

第12章 ヤキトリ




「あー、染みるわーー」
 
ジョッキに注がれた生ビールを半分ほど一気に煽り、私は長いため息とともに至福の声を漏らした。
金曜日の夜の居酒屋。香ばしいタレの匂いとガヤガヤとした喧騒が、一週間の疲れを溶かしていく。
 
「アズサさん、飲むペース早すぎ。
 空きっ腹なんですから、ほら、お通しの枝豆食べてください」
 
目の前で、結城くんが自分のレモンサワーのグラスを片手に、甲斐甲斐しく枝豆の皿を私の方へ寄せてくる。
 
「ありがと。……で、何? 居酒屋に入ってからもずっとニヤニヤして。
 プレミアム仕様の笑顔の押し売りは、さっきエレベーターの前でゼロ円買取って宣告したはずだけど?」
 
私は枝豆を口に放り込みながら、結城くんを見る。
 
「ひどいなあ。
 いやね、さっきアズサさんが『落ちてないかなあ』の妄想の中で、
 条件に『私の仕事終わりの愚痴を延々と聞いてくれる人』って言ってたじゃないですか」

結城くんはそう言って、カウンターに肘をつき、私の顔を覗き込んできた。

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