第11章 ビール飲みたい
「ありがと。……で、今日は何?
プレミアム仕様の優しさの、アルコール込みの夜間割増サービス?」
私がバッグを手に立ち上がると、結城くんは楽しそうに目を細めて言った。
「お、よく分かってますね。
じゃあ、今日のツケはですね……俺のキープしてる美味しい居酒屋で、俺がアズサさんに『超優しく』エスコートする権利、ってことで」
「却下」
私は間髪入れずに即答し、歩き出した。
「えっ、秒殺!? なんでですか! 条件、そこそこ満たしてるじゃないですか!」
「顔は整ってるけど私のタイプじゃないっていつも言ってるでしょ。
あと、あんたが酒を奢ってくれるわけないから、条件の『奢り』の部分が完全に未達成なのよ」
私が一蹴すると、結城くんは私の横に並んで歩きながら、大げさに肩を落とした。
「厳しい! そこはほら、俺がプレミアムな笑顔を振りまくからプライスレスってことで手を打ってくださいよ。ね? 行きましょうよ、ビール飲みたいんでしょ?」
「プレミアムな笑顔はゼロ円でも買い取らないから。
はい、却下。……でも、割り勘なら。私も飲みたい気分だし」
私があくまで「ただの飲み仲間」のスタンスを崩さずに言うと、結城くんは一瞬フリーズした。
が、すぐにいつもの調子に戻って、嬉しそうに笑った。
「流した! またそうやって俺の甘い誘いを
『ただの割り勘の飲み』に流すんだから、アズサさんは!」
結城くんが「せっかくのデート(仮)が!」とぼやきながらも、私の歩調に合わせてエレベーターのボタンを押す。
なんだかんだ言って、今夜の飲み相手を確保できて満足そうだ。
……本当に、バカだな。
私はスタスタとエレベーターに乗り込むと、スマホで近場の焼き鳥屋のメニューを検索し始めた。
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