第11章 ビール飲みたい
「あーあ、どっかに『身長180センチ以上、顔は国宝級、私を世界一甘やかすためだけに生きてて、かつ私の仕事終わりの愚痴を延々と聞きながら笑顔で酒を奢ってくれる極上のイケメン』、落ちてないかなあ」
金曜日の19時前。
オフィスの自席で、私はPCをシャットダウンしながら、これ以上ないほどダイレクトな欲望を口にする。
あー、ビール飲みたい。
「アズサさん、最後のはただの『金払いのいい聞き上手なスポンサー』を探してるだけですよね?」
案の定、パーテーションの向こうから聞き慣れた声がした。
ひょっこりと顔を出したのは、自分のデスクを片付け終えた結城くんだった。
本当に、私の「落ちてないかなあ」センサーでも搭載しているんだろうか、この男は。
「スポンサーじゃない。
大人の社交場をスマートにエスコートしてくれる、プレミアムなイケメン」
「都合のいい言い換えだなあ。
でもハイスペックなイケメンはいませんけど、アズサさんの愚痴なら一晩中でも笑顔で聞ける同期ならここに落ちてますよ?」
結城くんはそう言って、自分のビジネスバッグを肩にかけながら、ニヤリと笑った。