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現実エスケープ

第8章 昨日髪切った?



怪訝に思って顔を上げると、
そこには、ライターを持ったままフリーズしている結城くんがいた。
しかも、暗がりでも分かるくらい、耳まで真っ赤になっている。
 
「え、ちょっ……アズサさん、今、なんて、」
 
「え? ありがとって言っただけだけど」
 
「いやいやいや! ダメです!
  そういう、不意打ちの素直な照れは反則です!
 やめてください、こっちが照れるから!!」
 
結城くんはタバコを持つ手を泳がせながら、顔を片手で覆って、完全に私から視線を逸らした。
あのいつも余裕たっぷりな男が、私の一言で、私以上にガチで照れまくっている。
 
……あれ?
なんだ、この生き物。めちゃくちゃ面白い。 
結城くんのあまりの狼狽ぶりに、意地悪い余裕が湧き上がってきた。
 
「なーんだ。結城くん、そんなことで照れちゃうんだ?
 意外とチョロいね」
 
私はにやりと笑うと、一歩、彼の方に歩み寄った。
 
「ちょ、来ないでください!
 距離近い! ほら、俺、今めちゃくちゃテンパってますからね!?」
 
「へえー。じゃあ、もっと優しくしてあげたら、結城くん爆発しちゃう?」
 
「うわあああ! 流した!
 またそうやって俺の動揺をギャグに流すんだ、アズサさんは!!」
 
結城くんは顔を真っ赤にしたまま、
後ずさりして、そのまま逃げるように屋上のドアへと向かっていく。
 
「ちょ、まだタバコ一本目でしょ!?ほとんど吸ってないじゃん」
 
「もう無理です! 酸素が足りないんで先戻ります!!」
 
バタン!と大きな音を立てて、ドアが閉まった。
静かになった夜の屋上。
私は一人、手元に残った温かいココアを一口すする。
 
……はあ、バカだなあ。
 
そこまで可愛く照れるなんて想定外すぎた。
やっぱり、口が裂けても、そんなこと言ってあげないけど。
 
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