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現実エスケープ

第7章 落とし物回収センターは休業中



「あーあ、どっかに『俺より背が低くて、仕事頑張ってて、出来れば男以外で、頭は良くなくていいけど、性格かわいくて、もちろん顔は好みで、俺には超優しいアズサさん』、落ちてないかなあ」
 
晴れ渡った昼下がりの屋上。
ベンチに寝転がろうとした私の耳に、耳を疑うような、というか、
もはや隠す気ゼロのセリフが飛び込んできた。
結城くんがフェンスに寄りかかり、わざとらしく空を仰ぎながら、私の口調を真似て喋っている。
 
「……ちょっと待ちなさい」
 
私は脱力しかけた身体を無理やり起こして、彼を指差した。
 
「何ですか、アズサさん。
 俺、今いい人落ちてないかなーって妄想の海に旅立ってるところなんですけど」
 
「妄想の海にしては、だいぶ限定的な固有名称が聞こえたんですけど。
 名指しどころかフルネームに近い。何よ、アズサさんって」
 
「え? 偶然の一致ですよ。
 世の中にアズサさんなんていっぱいいるじゃないですか。
 たまたま俺の好みにドンピシャなアズサさんってだけです」
 
結城くんはそう言って、ニヤニヤしながらライターで煙草に火をつけた。
 
「あと、何よ『頭は良くなくていい』って。バカにしてんの?」
 
「いやいや、前回は気にしてなかったですよね、そこ。
 まあ、そこは『俺がフォローできるから問題ない』っていう、
 俺のプレミアムな優しさの表れですって。それよりアズサさん」
 
結城くんは煙を吐き出すと、私の隣に歩いてきて、いつものようにベンチの端に腰掛けた。

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