第6章 ゴミ箱は近くにあった
「あーあ、どっかに『背が高くって、お金持ちで、出来れば長男以外で、頭良くって、性格良くって、もちろん顔は良くって、で、俺には超優しいひと』、落ちてないかなあ」
晴れ渡った昼下がりの屋上。
ベンチに寝転がろうとした私の耳に、信じられないくらい聞き覚えのあるセリフが飛び込んできた。
結城くんがフェンスに寄りかかり、わざとらしく空を仰ぎながら私の口調を完璧にトレースしている。
「……何やってんの、あんた」
私は脱力しながら、ベンチに腰を下ろした。
「あ、アズサさん。
いやー、俺もどっかにいい人落ちてないかなーと思って。
これ、アズサさんの伝統芸能ですよね?」
結城くんはニヤニヤしながら、ライターで煙草に火をつけた。
「伝統芸能にするな。
というか、なんで私のセリフ全部覚えてんの。気持ち悪い」
「気持ち悪いって言われちゃった。
酷いなあ、全部聞こえてるって言ったじゃないですか」
彼はフッと煙を吐き出すと、私の隣に歩いてきて、これまたいつものようにベンチの端に腰掛けた。