第2章 〈過去編〉奇妙な演者
全国大会ならまだしも、たかが校内の新入部員の呼び込みのためのお披露目会のはずなのに。
たかが……
(……その意識の時点で、やっぱり私には相応しくない場所だ)
私はふと、パイプ椅子に座ったまま、周りの人の様子を暗中で見渡す。
皆が皆、落ち着いていたり楽しそうにして、先輩方の舞台を見上げている。
誰も私みたいによそ見なんてしないし、ビビってもいない。
私は次第に、焦燥感を覚えてしまう。
グッ
両膝の上の両拳を握る。
(これやっぱり無理だ…)
新たな自分を模索するどころか、今の自分を見失いそうになる。
きっとここにいるほとんどの人が、小さい頃から舞台に興味を持っていて、志を以て臨んでいる意識の高い入部希望者だ。
そんな中で私は、明らかに場違いだ。
演劇に対する情熱やその時間を費やしてきたキャリア。
いくら入部して頑張ろうとしたところで、周りの努力の熱に打ちひしがれて、ついていけなくなるに決まっている。
(誘われて嬉しかったからつい来ちゃったけど、やはり適当な理由をつけて、断れば良かった……)
何なら、今からでも……
「!」
私は隣の聖良に目を向けて言おうとしたが、声を出せなかった。
こちらからの視線に全く気付かず、舞台をじっくり観察していたから。
他の希望者とは空気が明らかに違う。隣からだとはっきりと目に見える。
その眼には、さっきまでのキラキラした憧れの面影は薄れ、じっくりその“眼”(まなこ)に焼き付けようとする無言の努力の空気がそこにあった。
まるで、師匠の技術を盗もうと切磋琢磨するお弟子さんみたいな真剣な横顔だった。
「……」
私は若干浮かせていた腰をパイプ椅子に据えて、再び聖良が見ている世界に目を向けた。
演劇部に入りたいとはまだ思ってないし、以前の私なら、ビビってお構いなしに帰っていたと思う。
一兄やことは姉がいるいつもの帰る家に戻って、いつも通りの日常へ逃げていたと思う。
ただ……このまま退席することは、彼女の情熱や想いに対する侮辱になりそうというか。
私のことを見てくれた初めての友達と、同じ目線で同じ世界を眺めてみたい。
そんな好奇心に似た勇気が、今後の私を大きく変えた。