第3章 〈過去編〉奇妙な先輩
ゾワッ
「!」
周りを取り囲む風鈴生の顔つきが変わった。
皆、“棪堂”と言う名前を聞いた途端に、空気が張り詰める。
(こ…この緊張感。一体……)
「……ケッ。そんな気持ち悪ぃ色した目と頭の奴。こっちから願い下げだね」
上級生はそれだけ言い捨てて、その場から立ち去ろうと背を向ける。
周りのギャラリーも段々と人気が薄れていく。
零は体の緊張がようやく抜けてホッとする。
(よ、良かった。穏便に済んで結果オーライで__)
サッ
「!」
棪堂はさっきまで零を抱えていた方の腕を離し、背を向けた先輩に向けてスタスタと歩いて行く。
その横顔には、さっきまでの子供っぽい悪そうな笑みはなく、無表情になっていた。
(え……)
明らかに怒りのこもった顔つき。握り拳も作っていた。
ガッ!
「!」
零は棪堂の腕を即座に掴んで、歩みを阻んだ。
「ま、待ってください…!ど、どうでもいいことですから……」
「……」
ニコッ
すると棪堂はまたさっきと同じような笑みを零す。
「そうだな。確かにもうどうでもいいな〜」
ポンッ
「!」
零の頭に大きな手を置いて、少々荒々しく撫でる。
「わっ」
ワシャワシャ
「いや〜。3年の奴らがやけに集まってるから何かと思いきや、まさか朝からとんだ下剋上とはな」
「あ。いや……」
面白おかしく笑いながら、おもちゃで遊ぶようなその姿は、ますます子供っぽかった。
「あ、あの……どうして__」
「つかお前、やっぱその頭地毛か。目もカラコンじゃ無そうだしな」
顔が近くなり、心臓がビクッと高鳴る。
(ち、近い……)
そう言うその人の容姿は、黒髪の癖っ毛で、目の色は水色と緑が入り混じったような淡い瞳だった。
「え、えっと……」
「ま、気にすんな。三流の言うことなんざ聞く必要はねえ」
その人はまるで、落ち込んでいるであろう私を励ますかのように、頭をポンポン叩き、ようやく手を離した。
「んで、どーしてお前みたいな嬢ちゃんが、こんなむさ苦しいとこにお出ましだ?」
「!」
ようやく相手の話を聞く気になったのか。
「えっと、兄さんに会いに来__」
ハッ!
素直に答えそうになるも、口を閉じる。
「?」