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【FF7】ボクシング・デー

第2章 煙草の味を覚えた日


街は、作戦通りに炎に包まれた。
立ち上る熱の勢いは強く、引き寄せられた雲が街を覆う頃には、燃えるものはほとんど残っていなかった。放っておいても自然と鎮火したであろう。だが、止めとばかりの雨が残りの火を押し流すように街を静かに飲み込んでいく。

集合場所では、トラックに同乗した兵たちが無言で立ち尽くしていた。
その中にレノの姿はない。

アグレイスは持ち場を離れ、辺りをうかがい歩いた。

街を見下ろす崖のそばで、黒いスーツの背中を見つけた。

後ろで束ねられた長い赤毛は雨に濡れ、重たく垂れ下がっている。
それとは対照的に、空へと昇る紫煙。
雨の中でも、タバコはやめられないらしい。

行きのトラックでのこと。
ミッション中でのこと。
謝らなければと、そう思って探していたはずなのに、その背中から目を逸らしてしまう。


「レノにとって必要な時間だ」

不意にかけられた言葉に足を止める。
振り向くと、ルードが煙をくねらせていた。
サングラスの奥の表情は読めない。

「そう」

前後も何も脈絡もない一言だったが、アグレイスには十分だった。

逆らえない命令。
ただそこで暮らしていただけの人間たち。
それらを焼き尽くした事実は、消えない。

役割、仕事、どんな理由を並べても、手を汚したのは自分なのだから。
やむを得ないと濁さず、すべてを背負う。
それが、レノの軽口の奥に隠されていた覚悟だったのだ。

彼が背負ったものは重い。
時には消化し切れないものがあるのかもしれない。
彼が彼の中のそれらを整理するに必要な時間が今なのだろう。

ルードはアグレイスに顔を向けたまま、消え入りそうな声で言う。

「君にも、必要な時間になる」

ルードの背中を見送ったアグレイスは、再び崖の方へ目を向けた。

「……煙草を吸いたくなる気持ち、わかったわ」
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