第2章 煙草の味を覚えた日
レノは、チラリとアグレイスを見やってから、意地悪く笑った。
「あんだけバカスカファイア打たれても平気だったんだ。問題ねえだろ」
「死ぬぞ」
「タバコ吸って死ねるなら本望だろ、相棒!」
悪びれる様子もないレノに、ルードはそれ以上何も言わなかった。
無駄なことに時間を使うのは、無駄なことだからだ。
「バカ言ってないで、行くわよ」
アグレイスが来た道とは違う方向に歩みを進めると、ルードが続く。
「おぉっと! 今回は立場が逆だなっと」
遅れたレノが、機嫌よく最後尾についた--。
「パパ?」
「あん?」
レノの背後に現れたのは、年端も行かない少女だった。
寝間着のような薄いピンクのワンピース。片手にはぬいぐるみ。
もう片方の手には、光るもの。
「あっ」
小さく声を上げ、少女がその場に崩れ落ちる。
乾いた金属音が響き、何かが石畳に散った。
うつ伏せの少女の背からの滲みが、石畳みの隙間を伝って不規則に広がっていく。
ナイフを投げた姿勢のまま、アグレイスはその一部始終を見届けた。
「油断した、助かったぞっと」
レノはアグレイスの肩を軽く叩き、何事もなかったかのように歩き出す。
アグレイスは答えるように一度頷くと、踵を返してその背を追った。