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【FF7】ボクシング・デー

第2章 煙草の味を覚えた日


アグレイスは、浅い呼吸を繰り返す。

すぐにでも倒れ込みたい気持ちを押さえ、前を見据えた。
黒スーツは闇に溶け込みすぎる。絶対に遅れてなるものか--アグレイスは、肺いっぱいに空気を送り込んだ。

前を駆けるレノ、その後を追うルード。アグレイスは少し距離を置く--乗ってきたトラック一車両分ほど。必死に足を動かしても、ルードの背中を見失わないようにするのがやっとという程度だ。

敵地の真っただ中での隠密行動とはいえ、アグレイスが走ることに集中できたのは、皮肉にも置いていかんばかりの速さで駆け抜ける二人のおかげでもあった。

バチバチと火花を散らすロッドが振り上がり、闇に弧を描く。
その動きは、魔法の光のように輝き、起動線上にいた相手は、抵抗もなく地に伏した。

レノも見事だが、相棒のルードも負けてはいない。その外見から力まかせと思われる彼だが、短い指示でレノを完璧にサポートする。地形の高低差や警備の配置まで把握しているかのように、最適なルートを選んで進む。まさに教本通りの戦術だ。

ーー苦しい。

限界を超えた走りのせいだけではない。
二人の連携を目の当たりにして、走るだけしかできない自分自身に胸が締め付けられる。
改めて、これ以上の遅れを取るものかと、自分を鼓舞させるように腕を大きく振り、足を前に押し出す。

前を走っていたはずのレノが大きく視界に映り込む。
追いついたのかと安堵する間もなく、レノがロッドを振り上げる。

アグレイスに向かって、歪な光の線が伸びた。

彼女が回避行動をとるまでもなく、光はその横を突き抜ける。

ジュウッと焼ける音がし、油が焦げたような嫌な臭いが彼女を追ってきた。

レノとルードが待つ位置にたどり着いたアグレイスは、恐る恐る振り返る。
少し後ろでフラフラと揺れる人の姿が目に入った。
顔を両手で覆い、苦しそうな声を上げている。

再度レノがロッドを振るうと、光の筋が男を貫いた。
仰向けに倒れ、何度か大きく体をバタつかせた後、動かなくなる。

「おぉっと、危機一髪だぜ? しっかりしてくれよ、オネイチャン」

レノが茶化すようにアグレイスの顎を指でしゃくる。
アグレイスは、眉を上げ強く睨み返した。
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