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【FF7】ボクシング・デー

第3章 過ぎた日


人混みの中、アグレイスは先頭に立って進んだ。怪我の重い二人に負担がかからないように、そう考えて進んだ場所だった。--が、結果は逆だった。

酒瓶を手にした若者が、大股で人混みを割って進んでくる。
衝突しかけた瞬間、肩に腕を回された。

「人、多すぎだろ。こりゃ店は無理か」

レノはアグレイスの肩を抱いたまま、周囲を一瞥する。
体重を預けられ、アグレイスは礼を言う機会を失った。

「先に行く」

「任せたぞっと」

前に出かけたルードが足を止めた。アグレイスが彼の服を引いていた。

「ルード、端の方に行ける?」

大通りを逸れた小道で、ルードが彼女を見下ろす。

「なんだ」

彼女は一歩距離を詰め、おもむろにルードのコートのボタンに手をかける。
ルードがその腕を掴むと、アグレイスが顔を上げる。

「傷、開いてるでしょ?」

「いや……なっ!」

「ウソつきはこうだ!」

回り込んでいたレノが、ルードを羽交い絞めにする。端から抵抗する気のないルードは大人しく身を任せ、白い息を吐いた。

「……好きにしろ」

許可を得たアグレイスが、コートを開く。見慣れた黒いスーツの腹部が他よりも濃い色をしていた。彼女は手を翳し、目を閉じた。

「ケアル」

小さな声が喧騒に紛れる。
淡い光が柔らかく、ルードを包んだ。

「すまない」

ルードに向かって満足気な表情を見せた、直後、彼女の膝が崩れた。
倒れ込む体をレノが支えに回る。

「おい、無茶すんなっての」

低い声。
回された腕に力がこもる。彼女が倒れる前よりも、確かで--少しだけ優しい。
アグレイスは小さく笑い、懐から取り出した菓子を、半ば強引にレノの口へ押し込んだ。
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