第6章 不思議な本
それから、浩ちゃんと一緒に寮まで戻った。浩ちゃんはずっと、下を向いている私に話しかけていてくれた。浩ちゃんの優しさが身に染みた。
翌日、朝になって買ってきた本を読もうかと思ったけど、やめた。もう少し時間があるときにしよう。
「花?いる?」
「うん、いるよ。」
ドア越しに話しかけてきたのは遥くんだった。何か急な用事でもあったのかな。今日は授業も部活もない完全な休日。実家に帰省する人もいるらしい。
「弓道部の連絡。」
「入っていいよ。」
「わかった。」
私はてっきりドアの向こう側にいるのは遥くんだけだと思ってた。なのに、予想していなかった人が部屋に入った。
「おはよ、白雲。」
「三浦・・・?で、連絡って?」
「14時から緊急ミーティングあるから。今日は帰省してる人も多いから、人数少ないって、中村先生が。」
「わかった。」
緊急?なんでこんな休日に・・・。今日の予定を変えなきゃ。ミーティングの時間にもよるけど、午後に買い物はできなさそう。今日の所は諦めて、部屋でのんびりしていよう。
「なんで俺がいるかは無視な訳?」
「いてもいなくても変わらないというか、むしろ、存在を消してくれた方がありがたい。」
「え、そこまで!?嫌われてるとは思ってたけど、ここまでとは思わなかったよ?」
「まぁまぁ。二人とも落ち着いて。」
遥くんがなだめてくれたおかげで少し気分が良くなった。けれど、三浦は少し不機嫌になった。
「どうして、そんなに仲悪いんだよ。」
「俺のせいなんだけどね。白雲がこうなったのも。」
「わかってたんだ。」
二人がなぜか私の部屋で昔話を始めた。しかも、話を聞いていると11年も前の話をしていた。私って、そんなに昔から三浦が嫌いだったんだ・・・。少なからず三浦に同情する私がいた。
しばらくすると、お昼になって一緒に食べることにした。今日は食堂はお休みで、そのまま、私の部屋で作ることになった。遥くんが私と三浦の親睦を深めるためだとかの理由でキッチンに立たされた。私は料理がうまいわけではないし、かといって三浦が料理をしそうにも見えない。小さい頃のあの経験から。