第2章 人類最強の休息
「……全く、手がかかる」
ソファに戻ったリヴァイは、少し決まり悪そうに髪を掻き上げ、淹れ直した二杯目の紅茶を口にした。
私も、未だにバクバクと暴れる心臓を落ち着かせながら、その隣へと座り直す。
「兵長、お疲れなんですか? 今日はなんだか、いつもより雰囲気が柔らかいです」
「あ? 俺がいつ硬かったってんだ」
「いつもですよ。鬼教官みたいに鋭い目をギラギラさせて。……でも、今の兵長は、なんだか普通の男の人みたいです」
私の言葉に、リヴァイは一瞬だけ目を見開いた。そして、呆れたようにふっと息を漏らす。
その顔に浮かんだのは、戦場での冷徹な笑みではなく、ただ一人の男としての、酷く穏やかで優しい、蜂蜜のような微笑みだった。
「普通の男、な。……お前がそういう風に俺を見てるなら、このクソ忙しい日々の中でも、少しは息を抜く価値があったってことだな」
彼が伸ばしてきた大きな手が、私の頭を乱暴に、だけど愛おしそうに撫で回す。
ゴツゴツとした、たくさんの死線を越えてきたその掌の温もりが心地よくて、私は猫のように目を細めてしまった。
この幸せな時間が、ずっと、ずっと続けばいいのに。
外の世界の残酷な戦いも、自分が抱える全ての義務も、今だけは綺麗さっぱり忘れてしまいたかった。