第2章 人類最強の休息
やがて、執務室の窓から差し込む光が、鮮やかなオレンジ色から深い茜色へと移り変わっていく。
影が長く伸び、そろそろ夕食の時間が近づいていることを知らせていた。
「……あ、もうこんな時間ですね。兵長、そろそろ戻らないと、ペトラ先輩たちに怪しまれちゃいます」
名残惜しさを隠しながら立ち上がり、スカートの皺を払う。私の日常へと戻ろうとする一歩。
だが、私が扉へと向かい、ドアノブに手をかけたその瞬間。
背後から音もなく近づいてきたリヴァイの手が、私の手の上からドアノブをがっちりと押さえ込んだ。
退路を断たれる形で、私は彼の身体と扉の間に挟まれる。
「へ、兵長……?」
振り返ろうとした私の視界を、彼の引き締まった身体が塞ぐ。
リヴァイは至近距離で私を見下ろしていた。その瞳には、先ほどまでの穏やかさとは違う、低く昏い、独占欲のような熱が灯っている。
「……おい。まだ、書類の仕分けが終わってねぇだろ」
「え? でも、さっき全部終わったって……」
「俺が終わってねぇと言ったら、終わってねぇんだ」
あからさまな嘘だった。
人類最強の男ともあろう人が、こんな子供じみた言い訳で、私を引き留めようとしている。
その事実が、たまらなく愛おしくて、胸が甘酸っぱさで満たされていく。