第2章 人類最強の休息
「なぁ、そこにある資料の束を上の棚に戻しておけ。埃が被らねぇようにな」
お茶を飲み終えたリヴァイが、顎で壁際の本棚を指した。私は「了解です」と立ち上がり、ずっしりと重い古い書類の束を抱えて本棚へと向かう。
だが、目的地は私の背丈よりも少し高い位置にあった。爪先立ちになり、目一杯腕を伸ばして資料を押し込もうとした、その時。
「あ――」
バランスを崩し、体が後ろへと傾く。あ、落ちる、そう思った瞬間に、背後から力強い腕が伸びてきて、私の腰をがっしりと抱き止めた。
「っ……!?」
背中に触れる、驚くほど硬くて熱い胸板。リヴァイの胸の中にすっぽりと収まる形で、私は彼に抱きしめられていた。
「危ねぇだろ、鈍臭いガキだ。お前は重力の手先か何かなのか?」
耳元で、リヴァイの低い声が鼓膜を震わせる。あまりの近さに頭が真っ白になり、私は身動きが取れなくなる。
「す、すみません……っ」と謝る私の肩越しに、彼は空いた手で軽々と資料を棚の奥へと押し込んだ。
その一連の動作の最中、彼の引き締まった腕の筋肉が私の身体にぴったりと押し当てられ、熱が伝わってくる。
資料を終い終えても、リヴァイの腕はすぐには離れなかった。
ほんの数秒、まるで私の体温を確かめるかのような微かな沈黙の後、彼は「……フン」と鼻を鳴らして、名残惜しそうに腕をほどいた。
心なしか、振り返った彼の耳の縁が、いつもより赤く染まっているように見えた。