第2章 人類最強の休息
外からは、遠くで訓練兵たちが声を張り上げる賑やかな音が聞こえてくる。
けれど、この厚い木扉で隔てられた執務室の中だけは、まるで時間の流れが止まってしまったかのように静かだった。
「……おい。茶の香りが薄いぞ。お前、また茶葉の量をケチったろ」
ローテーブルを挟んだ向かい側。
ソファに深く腰掛けたリヴァイが、いつも通りの仏頂面でカップを見つめていた。
文句を言いながらも、その手はしっかりと温かい陶器を包み込んでいる。
今日の彼は、いつもの白いスカーフを外し、シャツの第一ボタンをいくつか緩めていた。
人類最強と謳われる男の、普段は見せない剥き出しの鎖骨と、わずかに弛んだ空気。
そのオフの姿が妙に艶っぽくて、私は慌てて自分のカップへと視線を落とす。
「すみません。次はもう少し多めに淹れますね」
「……はっ。口先だけは一丁前だな。まぁいい、座れ。突っ立ってられると落ち着かねぇ」
無愛想に顎で示された特等席。
彼の隣へと腰を下ろすと、ふわりと上質な紅茶の香りと、彼特有の清廉な石鹸の匂いが鼻腔をくすぐった。
それだけで、私の心臓はうるさいほどの音を立て始めるのだった。