第2章 これぞジジイ殺し。
翌朝。
あたしは久しぶりに、朝食の準備をしていた。
普段なら仏飯として供えるために炊いたご飯に適当に生卵か納豆をかけて済ますところを、今朝はきちんと卵を焼いて、青菜を浸し、蕪を浅漬けにして、味噌汁まで拵えた。こんなに人間らしい朝食を用意したのは、約一年半ぶりの事だ。
完成した食事をダイニングテーブルに運べば、少し疲労の色を浮かべた堂島さんが眉尻を下げる――……昨日は結局、堂島さんはスーツのままリビングで一夜を明かした。疲弊していて当然だ。
「急に押しかけたようなものなのに、手伝いもしないで…………悪いな」
「そんな事。スーツが汚れたら大変ですし。
あ、あたし仏壇にあげてくるんで、先食べててください」
「仏壇があるのか?」
驚いたように、堂島さんが目を見開く。
……――確かに、あたしくらいの年齢の女の家に仏壇があるのは、今時珍しい事だろう。
だからあたしは、出来るだけなんでもない事を伝えるかのように努めて、頷いた。
「あたしの家族、祖母以外もう、みんな鬼籍で。その祖母も特老に入居したんで、あたしが管理してるんです、仏壇」
「そうか…………」
少し気まずそうに応えた堂島さんは、次いで、ためらいがちに申し出る。
「……――なあ、アンタさえ良ければ、俺にも礼拝をさせて貰えないか?」
「え」
「これから面倒をかける家の先祖だ。挨拶しておくのが筋だろ」
「…………ありがとうございます」
「礼を言うのは俺の方だよ」
苦笑して、堂島さんが立ち上がる。
あたしは用意した仏飯を手に、リビングの隅、直射日光の当たらない位置に置いた仏壇に堂島さんを案内する。コンパクトサイズのモダン仏壇の中には、祖父と、父と、母の位牌が納めてある。
仏飯をあげて、ろうそくに火を灯す。