第1章 事実は小説よりも奇なり。だいぶ。
……――そうだよな、と思う。
堂島大吾が東城会を襲名してからも、東城会は幾度となく危機に晒されてきた。
新作が出る度に本家の幹部衆が壊滅していた時期もある。そうした瀬戸際を、色んな人の助けを借りながらひとつひとつ乗り越えてきたのが堂島大吾なんだ。どんな難局も、自分がいま選べる最善を尽くして乗り越えてきた――……そういえばあたしは、堂島大吾のそういうキャラクター性が好きだったんだよな、なんて思い出しもした。それは久しぶりに思い出した感覚だった。
少しぬるくなった黒豆茶を啜る。
「……――あの」
気付けば、口火をきっていた。
堂島大吾が、視線だけであたしを促す。
「戻る…………帰る?? 手段、探すんですよね?
それなら、堂島…………さんさえ良ければ、ウチを拠点として使いませんか。
狭い家ですけど、部屋に余剰はありますし。
衣食住くらいなら、保障出来ますから」
「アンタに得がないだろう」
「それは、まあ、そうなんですけど…………
えー…………
あたし、そう言えば堂島さんのファンだったんだよな、って事を思い出して。いま」
「ファン…………?」
「はい。
その、誰に何を言われても険しい道を歩き続ける堂島さんの生き様、あたしは超カッコいいなって思ってて。勇気を貰った事も、あったし。だから、恩返しっていうか…………
…………もちろんムリにとは言いませんけど」
「いや…………
俺はこの…………世界? の勝手を知らない。
これからどう身を振るにしても、当面の拠点の確保は必要だ。
この世界に通じた協力者がいてくれれば尚心強い。
だが…………本当に良いのか?
若い女の一人暮らしなんだろ?」
「あ、はい、そこは、全然。
あたしの実家、宿だったから。
家の中に家族以外の人がいるのには慣れていると言いますか」
「…………俺も高く買われたもんだ」
堂島大吾――……堂島さんが、唇にあるかなきかの苦笑を刻む。
それから彼は真顔になって、「世話になる」と頭を下げた。
……――こうして、堂島さんとあたしの奇妙な共同生活ははじまったのだった。