第1章 事実は小説よりも奇なり。だいぶ。
「……? ……?? ……????」
ごく自然な動作で扉を開けた人影――……男は、まずは訝しげに首を捻り、次いで勢い良くあたしの方を振り向いて、驚いたように目を見開いた。彼は瞠目したまま扉とあたしを何度か見くらべ、それから、かすれた声で「アンタは…………?」とあたしに問う。
あたしはアンジェリカ入りのポットを抱えたまま、反射的に一歩、足を退いた。
(…………有り得ない)
目の前の光景に、声にならない悲鳴を飲み込む。
有り得ない――……そうだ。有り得ない。有り得ない。有り得ない!
夜半過ぎ。堂島大吾が、突然にウチの扉を開けただなんて――……
(……――どこの夢小説の入りだよ!?)
黙りこくるあたしに、男はいまいちど問いかける。
「ここは一体…………?」
あたしは答えられない。
アンジェリカ入りのポットを抱きしめて、呆然とする事しか――……
……――傍らで、ケトルが白い湯気を勢い良く吹き出している。