第16章 温もりは海を越えて
小さな部屋にいる悟を見つけ、椅子に座って上を向く悟に声をかける。
だが、返事はなかった。
それでも身体は腕を伸ばし、私の腰を引き寄せ、膝に乗せる。
後ろからきつく抱き締められて、お腹が潰されそうだった。
「ちょっと、悟。やめて」
「……千景?ごめん。わざとじゃないんだ。……なんかちょっと……なんでもない」
言葉を濁した悟に首を傾げながら立ち上がる。
悟の雰囲気がいつもと違って、静かだ。
でも悟は、それ以上話そうとはしなかった。
不思議に思いながらも、話したくないなら無理に聞く必要もないと思い、ここに来た目的に入る。
「悟さ……伏黒甚爾のお墓とか知ってる?悟と私たちの父親の間で何があったか知らないけど、頼れるのは悟だけなんだよね」
「あーうん。知ってるよ。……行きたいの?」
頷くと悟は私の手を取り、ペンを持つ。
まさか……。
そのまさかで、悟は私の手にお墓の住所を書いた。
住所と言っても、〇〇区〇〇霊園と書かれているだけ。
「ちょっともう……油性じゃないよね?」
「ん〜?もちろん――油性だよ」
ニカッと白い歯を見せる悟に溜め息をつき、お礼を言って、部屋を出ていこうとした。
だけど悟に止められて、「もう少しいてよ」と見上げられる。
目隠しを下げた悟は、その輝く蒼眼で私を捉える。
どうしたのだろうと思いながらも、私はそこに留まった。