第14章 君に触れて
黒人が先に気づき、悟を見る。
私はなんだか恥ずかしくて、悟の後ろに隠れていた。
何かを食べていた人物も振り返り、悟を見上げた。
「あれ、先生?」
「や。久しぶり〜」
――憂太だ。憂太がいる。
大好きな人の声が、久しぶりに鼓膜を震わせた。
最近は全然連絡も出来なくて、電話をかけても折り返しがなかった。
だから不安だった。
憂太はもう、私のことなんかどうでもいいんじゃないか。
発つ前に喧嘩をして、呆れられてしまったのではないか。
「ほら、出ておいで」
悟に促され、恐る恐る悟の背中から顔を出した。
頬に食べカスをつけた憂太は、固まったまま私を見ている。
「あ、あの……久しぶり……押しかけてごめん。うざいよね……わッ?!」
手首を掴まれたかと思うと引かれて憂太の胸に飛び込み、そのままきつく抱き締められた。
手が腰に移動し引き寄せられ、憂太の膝に乗る。
憂太は胸に顔を押し付け、思い切り空気を吸い込みながら擦る。
学ランで暑くて汗をかいているから、あまりくっつかれるのは……ましてや、匂いを嗅ぐなんて……。
「千景、好きだよ。ごめ……」
「ごめんなさい!ごめんなさい、憂太っ!」
憂太に好きだと言われ、憂太と会っていなかった時、自分が何をしていたか思い出した。
憂太の服を握り、必死に何度も謝る。
憂太は顔を離し、首を傾げて見上げてくる。
腰を掴みながら、軽く撫でた。
「どうしたの?そんな謝らなくても……え、泣いてるの?何かあった?」
私は街中だということを忘れ、子供のように声を上げて泣きじゃくった。