第12章 新しい波のなかで
「なんで怪我したの?なんですぐ言わないの?」
高専内の誰もいない路地に降ろされ、問い詰めてくる。
言えるわけもないと、また憂太から目を逸らした。
「治すよ」
憂太は溜め息をつきながら屈み、私の足に手を翳す。
すぐに足を引き、痛みで倒れてしまった。
尻もちをついたまま、頭をブンブンと振る。
「いい!いらない!硝子さんに診てもらったもん!」
憂太は首を傾げながら私の名前を呼ぶ。
目を瞑って俯き、答えることはしなかった。
「どうしてもダメ?明日には海外に行くから、夜にしたいんだけど……嫌?」
髪をひと束掬って撫でられる。
口を開かないまま、全身に力を入れた。
憂太に限ってはないと思うけど、嫌な想像が頭を駆け巡る。
――真希にも、こんな風に優しく触れるの?
意思とは裏腹に、憂太の手を払い除けた。
もっとずっと、触れていて欲しいのに……。
憂太は何も言わず、また私を抱え上げ、寮へと向かった。
今は、憂太の優しさが痛い。