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夢のまま【サンジ】

第1章 はじまり


風が少しだけ弱くなる。

海の音が、さっきより近く感じる

柵にもたれているサンジの横顔を見て、 ことみは一瞬だけ視線を逸らした。

(やばい)

まただ

この人の声、普通に会話してるだけなのに、 いちいち頭に残る。

低いのに軽くて、 ちゃんと優しいのに、どこか距離が近い。

「……友だちのこと、そんな気になるか?」

さっきと同じ声

なのに、今はさっきより近く聞こえる。

ことみの中で、変な感覚が走る。

(ゾクってした……今の)

理由は分かってる。

推しの声だからだ。

ずっと画面越しで聞いてた声が、 今は目の前で、自分に向けられている。

現実の空気の中で響いてる

「……はい」

返事をするだけで精一杯になる

サンジは気づいてないのか、気づいていて流しているのか、 そのまま海を見て煙を吐いた。

「そっか」

それだけ。

なのに、その一言もまた落ち着かない。

(やばい、ほんとやばい)

(普通に話してるだけなのに)

(声がずるいってこういうこと……?)

顔には出さないようにしているのに、 心臓だけが忙しい。

サンジがちらっと横を見る。

「……なんか変な顔してんな」



「してません」


「今の間はなんだよ」

「気のせいです」

「絶対違うだろ」

軽く笑われる

その笑い声すら、また少しだけ跳ねる。

(ほんと無理なんだけどこの人)

でもそれは嫌とかじゃなくて、

ただ、情報量が多すぎるだけだった。

声も、距離も、優しさも。

静かな海の上で、 それだけがやけに強く響いていた。
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