第2章 2
ことみは小さくうなずいて、人の流れに足を踏み入れた。
一歩出た瞬間、世界の“音”が変わる。
潮の匂いに混じって、肉を焼く匂い、酒の匂い、どこかの楽器の音。笑い声も怒鳴り声も全部混ざって、まとまりなんてないのに、不思議とそれが“日常”として成立している。
「なにここ……」
思わずこぼれた声は、すぐ人波に飲まれた。
ルフィがそのままの勢いで駆け出す。
「肉ーー!!」
「ちょっと!船長!!」
ナミの声が街に響く。ゾロはすでにどこかへ消えかけている。
ウソップが慌てて周りを見回しながら叫ぶ。
「毎回こうだからな!?この船!!」
「普通じゃない……絶対……」
ことみは圧倒されて立ち止まる。
屋台の上には見たことのない魚、見たことのない果物、そして普通に武器みたいなものまで並んでいる。
(これ、全部現実……?)
そのとき、後ろから軽く声が落ちる。
「こっちだ、ことみちゃん」
サンジだった。
人の流れの中でも、やけに目立つ。落ち着いた足取りなのに、周りの騒がしさに全く負けていない。
「はぐれたら厄介だからな」
そう言いながら、自然に前へ出て道を作るみたいに歩く。
その一瞬だけ、この世界の“速さ”から切り離されたみたいになる。
ことみは慌ててついていった。
「ここ、いつもこんな感じなんですか……?」
「まぁな。静かな島の方が珍しいくらいだ」
軽く言われて、言葉を失う。
(これが“普通”の世界なんだ……)
知らないのに、全部が生きてる。
その事実に、怖さより先に、妙な現実感が押し寄せてきた。