第2章 2
空気が一気に変わった。
潮の匂いと、人の声と、雑多なざわめき。
さっきまで海の上だったのが嘘みたいに、 地面がしっかりと足を支えてくる。
「よし、行くわよ」
ナミが手際よく人数を確認しながら言う。
その手には、小さな袋がいくつか握られていた。
「ことみ、これ」
ぽん、と軽い音で渡される。
「え、これ……?」
「この島で使うお金。あとでしっかり返してもらうからね」
にやっとした笑み。
有無を言わせない感じなのに、妙に慣れている。
「は、はい……!」
慌てて受け取る。
(え、貸しとかあるんだ……)
現実感のあるようで、どこか現実じゃないルール。
その横でルフィがもう走り出している。
「肉ーー!!」
「だから待てってば!!」
遠くで騒ぎが始まる。
その流れの中で、サンジの声がふっと聞こえた。
「はぐれるなよ、ことみちゃん」
軽い一言。
でもその瞬間だけ、 少しだけ安心する。
知らない島なのに、 完全な孤独じゃないのがわかるから。
ことみはお金の入った袋を握り直して、 人の流れに足を踏み出した。