第1章 はじまり
ことみが今起きたことと、自分が別の場所から来たらしいことを、クルーたちにたどたどしく伝えた。
空気が一瞬だけ止まる。
「まぁまずはメシだ、ことみちゃん」
その一言で、強制的に移動が決まった
ふわふわしたまま、サンジに支えられるようにして歩く
船の揺れ。 木の床の軋む音。 どこまでも現実なのに、現実感が追いつかない
厨房に入った瞬間、空気が変わった
香りが一気に濃くなる
焼けるバターの匂い、スープの湯気、パンの香ばしさ。
「うわ……」
思わず声が漏れた
「腹減ってるやつの顔だな」
サンジが軽く笑う
「ちょっと座ってろ、ことみちゃん」
言われるまま椅子に座ると、 目の前にあっという間に皿が並んでいく。
「え、これ全部……?」
「お前細いしな。まずは食え」
「……優しすぎません?」
ぽつっと言うと、 サンジは一瞬だけ黙ってから煙を吐いた
「普通だろ」
その“普通”が、この世界では普通じゃない気がする