第1章 はじまり
次に目を開けた時。
鼻を掠めたのは、 潮の匂いだった。
揺れている。
知らないベッド
というか、 どこ?
ぼやけた視界のまま身体を起こそうとして、 頭に鈍い痛みが走る。
「お、起きたか」
低く、よく通る声
どこかで聞いたことある声
視界がゆっくり焦点を結ぶ。
最初に見えたのは、 黒いスーツ。
細い指。
口元の煙草。
そして。
金髪。
「………………」
脳が停止した。
片目を隠す前髪。
ぐるりと巻いた眉。
整いすぎている顔。
見間違えるはずがない。
サンジ が、そこにいた。
「……え?」
「海に浮いてたんだよ、お前」
サンジは呆れたように肩を竦める。
「死ぬ気かと思ったぜ」
待って。
待って待って待って。
なんでサンジくん?
夢?
死んだ?
でも痛い。
ていうか声が良すぎる。
「顔色悪ィな」
サンジが少し屈み込む。
近い。
無理。
本物だ。
睫毛長。
「……っ」
「?」
「やば……」
「何が?」
「ビジュがいい……」
思わず本音が漏れた。
サンジが眉を寄せる。
「ビジュ?」
そこへ
「おーー!! 起きたか!!」
勢いよく扉が開いた。
麦わら帽子。
赤いベスト。
満面の笑み。
モンキー・D・ルフィ 。
「ビジュってなんだ? うまいのか?」
「食べ物じゃない!!」
反射でツッコんでしまった。
「なんだ違うのか!」
「なんで食べようとしてんの!?」
「ルフィ、お前は黙ってろ」
サンジが呆れたように煙を吐く。
そのやり取りすら、 完全に“本物”だった。
画面越しじゃない。
アニメじゃない。
ちゃんとそこに存在して、 喋って、 笑ってる。
その現実感に、 あなたはくらくらした。
「…………むり」
「?」
「推しが渋滞してる……」