第2章 2
水平線の向こうに、小さな影が見え始めた。
それは船が進むにつれて、少しずつ形をはっきりさせていく。
「島だーーー!!」
真っ先に叫んだのはルフィだった。
ルフィは柵に身を乗り出して、もう完全に上陸モードだ。
「次の島よ。補給もできるし、今日は停泊ね」
ナミが航路を確認しながら言う。
ナミの声はいつも通り現実的で、でもどこか慣れた安心感がある。
その後ろで、サンジの声。
「ことみちゃん、初めての島だろ?」
サンジが煙草をくわえたまま、軽く笑っていた。
「はい!」
返事は思ったより弾んでいた。
だって、今から降りる場所は“ワンピースの世界の島”だ。
ずっと画面越しに見ていた場所に、自分が立つ。
それだけで、胸の奥が勝手に騒ぐ。
「やば……ほんとにあるんだ……」
小さく漏れた声に、ウソップが笑う。
「あるに決まってんだろ!」
ルフィはもう別の方向を見ていた。
「肉あるかな!!」
「そこかよ!!」
いつも通りの騒がしさ。
でもことみの頭の中は、まだふわふわしていた。
島に行く。
海賊の世界の、島に。
(ワンピースの世界だな……)
そう思った瞬間だった。
「……ん?」
ウソップが首をかしげる。
「今、ワンピースの世界って言ったか?」
空気が一瞬だけ止まる。
「えっ」
しまった、と気づいた時には遅かった。
「いや違います!あの、その……」
「ワンピースって宝のことか?」
ルフィが目を輝かせる。
「それならオレも行くぞ!!」
「いやそうじゃなくて!!」
慌てて手を振るみかこに、ウソップが頭を抱える。
「変な言い方すんなよ……」
その横で、サンジが小さく笑った。
「初めての島でテンション上がってんだろ」
呆れたようで、少しだけ優しい声。
「まぁ無理もねェけどな」
ことみは顔が熱くなるのを感じながら、 小さくうなずくしかなかった。
その間にも、船はゆっくりと港へ近づいていく。
知らない街。
知らない空気。
それなのに、不思議と怖さより先に、 期待の方が少しだけ勝っていた。