第2章 2
「ことみー!」
今度はルフィの声。
「それ取ってくれー!」
「え、どれですか!?」
慌てて振り向くと、甲板の端でルフィが大きく手を振っている。
「それそれ!」
「雑すぎる……!」
思わず言いながら駆け寄る。
船の上は相変わらず騒がしい。
ウソップは何かを組み立てながら大声を出しているし、 チョッパーはその横で「すげー!」と目を輝かせている。
ナミは呆れた顔でため息をつきながらも、 結局ちゃんと全体を見ていた。
その空気の中に、自分も自然に混ざっている。
昨日までなら考えられなかったことなのに。
「ことみちゃん、それこっちな」
サンジの声。
振り向くと、皿を片手に立っていた。
「あ、はい」
もう反射みたいに返事が出る。
皿を受け取る瞬間、 ふと気づく。
前みたいに、声が聞こえるたび固まることが減っていた。
もちろん好きだ。
推しなのも変わらない。
声がいいって思うのも、変わらない。
でも最近は、 “特別な音”として聞く前に、 先に体が反応するようになってきている。
「ぼーっとしてっと落とすぞ」
「……してません」
「してる」
即答。
思わず少し笑ってしまう。
そのやり取りすら、 もう何回か繰り返している気がした。
サンジは特に気にした様子もなく、 そのまま厨房の方へ戻っていく。
ことみはその背中を少しだけ目で追ってから、 手元の皿を見る。
(……慣れてきた、のかな)
この船の空気に。
みんなの声に。
そして、
この人がそこにいることにも。