第2章 2
朝のサニー号は、相変わらず騒がしい。
甲板に出ると、風が少しだけ冷たかった
海は静かなのに、船の中だけがずっと動いている。
「ことみー!それこっち持ってってくれー!」
ルフィの声が飛んでくる
「はいはい……!」
慌てて返事して走る
その途中で、厨房の方から声。
「そこの皿、落とすなよ」
サンジの声だった。
振り向かなくてもわかるくらい、いつもの調子
それだけなのに、ほんの少しだけ意識が引っ張られる。
(……まただ)
でも今は考えている余裕もなくて、とにかく手を動かす。
船の中はいつも忙しい
ウソップは工具を広げて騒いでいて、 チョッパーはその横で一生懸命メモを取っている。
ナミは甲板で地図を広げていて、誰にも触らせない空気を出していた。
「そこ右にずらして」
またサンジの声。
気づけば、すぐ後ろにいた
「え、ここですか?」
「そう」
距離が近い。
ただそれだけなのに、少しだけ呼吸が変になる。
でもサンジは普通に皿を見ているだけで、 特に気にしている様子はない。
「雑に置くなよ、割れるだろ」
「すみません」
短いやり取り。
それだけで終わる。
なのに、その声だけはなぜか残る。
(ほんとに普通の会話なのに……)
気づけば、また少しだけ耳がそっちに寄っている。
その時、遠くでルフィの叫び声
「腹減ったーー!!」
「さっき食べたばっかだろ!!」
サンジの返事が飛ぶ。
そのやり取りを聞きながら、ことみは皿を運ぶ。
この船の日常は、ずっとこんな感じだ。
騒がしくて、忙しくて、 でもどこか落ち着いている。
そしてその中に、 やけに自然に混ざっている声がある。
まだ何も特別なことは起きていないのに、 それだけは少しずつ、日常に馴染んできていた。