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夢のまま【サンジ】

第1章 はじまり


甲板に出ると、風が一気に抜けていく。

さっきまでの厨房の熱気がうそのように、海の匂いだけが広がっていた

ことみは柵にもたれて、目を閉じた。

騒がしい声が遠くで混ざっている。

ルフィの笑い声

ウソップの大げさな叫び

その中に、ひとつだけはっきり聞こえる声がある。

「だから待てって言ってんだろ!!」

サンジの声だった。

それだけで、なぜか意識がそっちに引っ張られる。

(まただ)

ただ怒ってるだけの声なのに。

普通に会話してるだけなのに。

耳に入った瞬間、少しだけ心臓が反応する。

ゾクッとするような、でも嫌じゃない感覚。

目を閉じたまま、みかこは小さく息を吐いた。

(ほんと変なの)

推しだから好きなのは当たり前

そう思っていた。

画面越しで聞いていた声が、今はすぐ近くにある。

距離があるはずなのに、やけに近く感じる。

「おい」

後ろから声がして、みかこは反射的に目を開けた

サンジがいた。

いつものように煙草をくわえて、軽くこちらを見ている

「寝てんのかと思った」

「寝てません」

即答したあとで、自分の声が少しだけ早いことに気づく。

サンジは特に気にした様子もなく、海に視線を戻した。

その横顔を見ながら、みかこは思う

(今の声……まただ)

たった一言なのに、変に残る。

安心するのに、落ち着かない。

ただの会話のはずなのに、意識だけが少しずつ引っ張られていく。

「ぼーっとすんな」

「……してません」

「してる」

短いやりとり

それだけなのに、さっきより心臓が静かじゃない。

みかこは視線を海に戻すふりをして、少しだけ距離を取った。

(声だけで、こんな反応するのおかしいでしょ)

そう思っても、音は消えない。

むしろ、残る。

海の音よりも、ずっと。
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