第5章 自覚
次の日の朝ーーー
アリスと中也は食堂に来ていた。
余程、昨日の中也の一睨みが効いたのだろう。あれだけアリスを囲んで話し掛けに来た男達は、アリスが現れたのには気付いていたが、遠巻きにアリスのこと見るに留まっていた。
ーーー只、一人を除いて。
「おはよう。昨日はよく眠れたか?」
「あ、おはようございます。ちゃんと眠れましたよ」
ニッコリと笑って云ったアリス。その表情を見て、男は思わず息を呑む。
そんなやり取りを見て、中也は隠しもせずに舌打ちした。
「俺は手前のせいで寝不足だけどな。寝込みを襲いにきやがって」
「!?だから誤解だ!点呼だと云っているだろう!?」
余程、アリスに気に入られたいのであろう。
男は大声で中也の言葉を否定する。
「点呼があったんですねー私眠っちゃってて気付かなかった。夜更かし苦手で……ご免なさい」
「いっ…いや、いいんだ。ちゃんと居ることさえ判れば!」
「何時もあんな夜中にあンのか?」
「働いている以上、大人だからな。夜更かしの事については厳しく云わない事になっているが、本日の業務に差し支えがあったら困るからな」
「へぇー。俺はてっきりアリスを…」
「断じて違うからな!」
「お兄さんは繋ぎ服着てないから此処の社員さんじゃあなさそうだけど、点呼を任されるってことは此処でのバイトは初めてじゃない感じですか?」
アリスは首を傾げて質問する。
「あ、ああ。俺は正社員ではないが、頻繁にこのバイトに参加していてな。今回でもう6回目だ」
「6回も!それじゃあ此処でのお知り合いもいるでしょ?」
「社員とはもう顔見知りだな。あと彼奴と彼奴も2、3回被ってるから仲間意識あるな」
「バイト仲間ですね」
アリスがニコッと笑って云う。
「そうなるな。…何でそんなことを訊くんだ?」
「いやー私達、初めて参加したけどこんなに好条件なアルバイト、今まで見たことなかったから本当にお金貰えるのかなーってちょっぴり不安になっちゃって」
「そうか。でも安心しろ。本当に終了日に給料貰えるから」
「善かった。じゃあ今日も頑張らないと。ね、お兄ちゃん」
「……もう行くぞ」
返事の代わりにアリスの頭を撫でて、移動する中也。
その後ろを追い掛けるアリスだった。