第5章 自覚
シン、と静まった部屋。
そのせいで速くなっている自分の鼓動が五月蠅く感じるアリス。
一呼吸おいて、
『マッドティーパーティー』
異能を展開して入浴を始めた。
身体と髪を洗って、湯船に浸かる。
顔の赤みと鼓動の速さは大分落ち着いてきたようだ。
「ふぅ…」
湯船に浸かりながら、先程のことを考える。
「私がポートマフィアに入った理由は……中也兄が……」
口元まで水面に浸かり、言葉が途切れる。
アリスがポートマフィアに所属した理由は、
先刻も正直に述べた通り、「取引だけで会うのに一寸寂しさをおぼえたから」であり、その時思い浮かべていたのは、間違いなく中原中也だった。
然し、そのことを面と向かって話すのは恥ずかしかった。
誰にも話していない、アリスだけの秘密だった。
切っ掛けは、一番嫌いな日だった誕生日ーーー
「そろそろ上がろう。逆上せちゃう」
アリスは、湯船から上がると体を拭いて、ネグリジェに着替える。
そして、壁から突然生えたドライヤーで髪の毛を乾かすと、異能を解いて元の世界に戻ってきたのだった。
「おう、おかえり」
「ただいまー」
何時も通りの中也。
それもその筈だ。動揺していたのはアリスの方だけだったのだから。
中也はベッドに横になっていた。それを見てアリスはハッとする。
「私、あっちで寝てこればよかったね!」
そう云って、早速異能を展開しようとしたところを中也が腕を掴んで静止した。
「一緒に寝りゃいいだろ」
「へ?」
またもやぐいっと引っ張られ、バランスを崩したアリスは中也の上にぽすりと着地?する。
そんなアリスをヒョイと抱えて、壁際に寄せられたベッドの壁の方に寝せてやると自身もゴロンと横になる中也。
元より小柄な2人だ。
お互いが寝返りを打っても大丈夫な程、十分な広さがベッドにはあった、が。
「おやすみアリス。大人しく此処に居ろよ?」
アリスは天井を見ていた。
頭の下には中也の腕。掛けられた布団の上にも中也の腕。
完全に抱き締められている形で横臥しているーーー。
「……へ?」
折角引いた顔の赤みが、鼓動の速さが。
再び舞い戻ってきたのであった。