第5章 自覚
休憩を挟んで7時間労働したアリス達。
結局のところ、中也が3箱半、他の人たちも2箱目の途中という結果であったが、アリス一人だけ20箱近く終わらせていた。
その結果、アリスに注目が集まる。
食堂で食事を取っている中也とアリスに知らない男たちが次々と話掛けてくるのだ。
「お嬢ちゃん、すげーな!今幾つだい?」
「15歳だよ」
「まだ学生さんか!もっと若く見えるなー」
「よく云われるけど全然嬉しくない」
「学校は?」
「お金がないから行けてないの。だからお兄ちゃんと一緒に働いて稼いで学校に行くのが目標なんだー」
「若いのに偉いなー」
隣にいる中也に目もくれず、アリスにばかり話し掛ける男達にうんざりしながら食事していた中也だった、が。
一人の男がアリスの頭に手を伸ばした瞬間だった。
ガッ!
「「!?」」
中也がその腕を咄嗟に掴んだ。
手を掴まれた男も、そしてアリスも驚いた顔をしている。
然し、この場で一番驚いていたのは手を掴んだ本人である中也だった。
「気安く触ろうとしてンじゃねえよ」
唯一の救いは、顔に出なかった事だけ。
動揺を悟られないように落ち着いた声で、然しハッキリと男に告げながらパッと手を離した。
男も慌てて手を引っ込める。
「お兄ちゃん?」
「早く飯食え。部屋で休みてェ」
「分かったー」
アリスはそう云うと、ご飯を食べ始める。
どことなく気まずい雰囲気が漂う中、中也はジロリと男達を睨み付けて口を開いた。
「散れ」
たった一言。
然し、男達が行動するのには充分だった。
慌てたように全員、アリスの側から離れていったのだった。
「……五月蝿くしたから怒ってる?」
「別に怒っちゃいねェよ。ほら、さっさと食え」
ポンポン、と。
先程男がしようとしたであろう行為を自身が行う。
アリスは小さく笑ってコクリと頷くと残りのご飯を食べ始めた。
その様子を見ながら、中也は一人考え始める。
何故、手を止めたのか。
「……、はぁ」
「?」
「何でもねェよ。只の独り言だ」
否、考えるまでもなかった。
頭を撫でたときに見せるアリスの笑顔が、他の男の目に留まることを。
ーーー他の男に向けられることを只、避けたかったのだ。