第5章 自覚
「はァ?何でこんな小せェ工場なんかに潜入すンだよ」
仕事内容を聞いて、中原中也は眉を顰めた。
「***の武装力を上げた原因ーーー銃火器類がこの工場にあると思うんだ」
「……、裏は取れてンのか?」
中也の一言にコクリとと頷くアリス。
「***の人間がこの工場に出入りしているところや、大きいトラックで出ていっているのが防犯カメラに映ってた」
「其処まで判ってんなら仕方ねえか」
「一緒に行ってくれる?中也兄」
「……。」
不安そうに訊いてくるアリス。
太宰に押し付けられた仕事で、そこまで大きな規模でもない工場への潜入捜査と云われてげんなりしていた中也だったが、目の前の少女が一緒となると話が変わってくる。
中也はアリスの頭をポンポンと撫でた。
「まァ、手前の大事な初仕事だしな」
「有難う中也兄!」
パァ、と笑顔になったアリスの顔を見て、小さく息を吐く中也。
「にしても、ポートマフィアって新人にいきなりこんな大仕事振るの?」
「否、太宰の嫌がらせだろ」
「矢っ張りそう?薄々はそう思ってたんだけど」
そんな会話を混ぜながら、資料を見る二人。
「潜入する△△工場は随分前からある部品工場みたいなんだけど、ある時期を境に、不定期に大きいお金が動いている形跡があるの」
「怪しさ満点だな」
「その原因は未だ判んないけど」
「ある時期って、何時頃からなンだ?」
「約3年前からだよ」
「……パラサイトが絡んでるって云ってたか?」
「まだ、可能性の話だけど…」
「……時期は合うな」
中也の言葉にアリスはコクリと頷き、1枚の紙を差し出す。
そこに書かれていたのは『住み込みアルバイト募集』の文字。
「大きいお金が動く前は、必ずその募集が掛かってる」
「堅気を利用してンのか」
「ただ単に、元より此方側の人間じゃないから世間一般的な方法で人を集めた結果だと思う」
「成程な」
再度、募集の紙に目を移す中也。
年齢は15歳から上限なしで、資格も必要なし。
3食付きで、おまけに日当は壱万円。最低一週間の勤務が条件とくれば、人は簡単に集まりそうだと感じた。
そして、中也はあることに気付く。
『5月1日〜〆切5月10日まで』
「これ、募集が昨日からじゃねえか」
アリスはニッコリと笑った。