第4章 パラサイト その1
「是迄の取引相手や少女達の記憶を消したのもその力という訳か」
「否、消した訳じゃないよ。あやふやにしただけ」
「!」
「たとえ同じ体験をしても、興味関心の有無で各々違うように残っちゃうものでしょ?記憶って。だから完全に消すことって難しいんだよ」
出来ない事は無いと思うんだけど。
「私との取引条件を覚えているかい?」
謀られたか。
アリスの発言を聞いて太宰の声のトーンが少し下がる。
「ちゃんと覚えてるよ。でも私だって記憶の改竄とは云ったけど記憶の消去なんて一言もいってないからね?」
「……。」
確かにその通りだ。
今までの取引相手が、何より自身の相棒ですらアリスの事だけを忘れていた事もあり、完全に隠蔽出来ると勝手に想像していたのは太宰の方。
「どうせ盗聴してたんだから分かってると思うけど、あの女の子達は此処の事は忘れてたでしょ?」
「………盗聴までバレてるのか。予測はしていたけど」
ふぅ、と息を吐く。
声のトーンが元に戻った。
「電波や音も操作対象だし、『私』に盗聴機を仕掛けたなら尚更だよ。『嘘』と同じ」
クスクス笑うアリス。
「記憶操作の条件は『私が関わった部分』これは絶対条件だよ。類似体験とかすれば記憶を呼び起こす恐れがあるかもしれないけど、普通に生活をしていればマフィアに関わるなんてこと、そう有ることじゃないし。たとえ私と偶々再会して思い出したとしても…」
「また忘れさせればいい、か。」
「その通り」
アリスはニッコリ笑った。
「太宰がぶっ放した銃弾を止めたのは」
「『時間』だよ。私は生きものの時間は『私自身以外操作できない』けれど、その他だったらその時を操れる」
「……。」
「チートじゃねえか、手前」
「え、そう?」
驚き過ぎた声で云う中也に、キョトンとするアリス。
太宰も顔にも口にも出さないが、驚いていた。