第6章 春夏「秋」冬
虎杖「えぇ、、、、じゃあ、ワカンナイデス・・・」
「うん、うん。でも、“わからない”ってちゃんと言えるのは偉いことだよ~。」
そう言って、は虎杖の席まで歩み寄る。
机にそっと片手をつき、虎杖のノートを覗き込むように身を屈めた。
ふわり、と。
柔らかい花みたいな香りが不意に鼻先をかすめる。
近い。
虎杖「――っ、」
耳のすぐ近くで落ちる穏やかな声に、肩がびくりと揺れた。
「“移項する”っていうのは、式の反対側に移動させる代わりに、符号を変えるってこと。」
白い指先がノートの上を滑り、式の“-2x”を軽く丸で囲む。
「だから、“-2x”は――?」
虎杖「あっ・・・。“+2x”?」
「そう、正解っ。」
にこっと笑った顔が近くで視界に入って、
虎杖は一瞬言葉に詰まる。
胸の奥が、ぞく、と騒いだ。
虎杖「・・・・・・ナルホド。」
釘崎「本当にわかったのかよっ、」
「ふふっ、また1つ賢くなっちゃったね!
じゃあ、次は・・・」
再び黒板へ向かったが、
慣れた手つきでチョークを走らせる。
サクサクと授業が進む。
伏黒(蘆屋先生の、あぁいう無自覚なところが、
五条先生と乙骨先輩が沼るポイントなんだろうな。
もはや、あれは、どっちかっていうと、蘆屋先生が悪い気がする。)
黒板を振り返るたびに揺れる柔らかい髪。
褒める時の距離感。
自然に名前を呼ぶ声。
授業を聞きながら蘆屋を分析する伏黒。
伏黒(実際、さっきから虎杖は妙に静かだし。)
ちら、と横を見る。
虎杖は頬杖をつきながら、どこかぼんやりした顔で黒板を見ていた。
伏黒(・・・・ほらな。)
「じゃあ~・・・、これ、伏黒君わかる?」
不意に名前を呼ばれ、伏黒は顔を上げる。
黒板には途中式が書かれている。
伏黒「・・・・x=4、y=-1。」
ぱっと表情を明るくしたが、
感心したように黒板と伏黒のノートを見比べる。
「正解っ。しかも、途中式ちゃんと省略せずに書けてるの偉いですっ。ふふっ」
そう言いながら、伏黒のノートを軽く指差す。
キーンコーンカーンコーン・・・