第5章 記憶×記録
――少しだけ、時間は遡る。
~ ひまわり畑の入口付近 ~
背の高いひまわりの影に隠れるようにして、
二つの人影がしゃがみ込んでいた。
パンダ「さーて、乙骨は大丈夫かなァ。」
わくわくした声音でひまわりの隙間から覗き込むパンダの頭を、
真希がぐいっと押さえつける。
真希「ばれるだろ、しゃがめ。」
パンダ「いてっ。」
がさがさ、と葉が揺れる。
真希は呆れたようにため息を吐きながらも、
自分もつい視線を向けてしまう。
遠くの休憩所。
並んで座る乙骨と主人公の姿が見えた。
パンダ「あ、いたいた!!」
真希「声がでけぇ。」
再び頭を押さえ込まれ、パンダが「むぐっ」と変な声を漏らす。
その横で、真希はじっと乙骨を見つめた。
普段より少しだけ緊張した背中。
けれど、乙骨が彼女へ向ける眼差しだけは変わらない。
真希「……アイツ、ちゃんと言えたのか?」
パンダ「さぁ? でも乙骨のことだから、変なとこで気ぃ遣ってそう。」
真希「だな。ありえる。」
二人同時に納得してしまう。
風が吹き抜け、ひまわりが一斉に揺れた。
パンダは再びこそこそと顔を上げる。
パンダ「青春だねぇ。」
真希「親かお前は。」
そう言いながらも、
真希の口元もほんの少しだけ緩んでいた。
パンダ「……にしても、全然、聞こえねぇな。」
パンダはひまわりの隙間からぐいっと顔を突き出しながらもどかしい顔をしていた。
真希「そりゃそうだろ。」
パンダ「よし、もう少し近くに行こうぜ!」
真希「は?」
真希は慌ててパンダの頭を押さえつけてる。
真希「待て待て待て。完全に不審者だし、パンダ、お前がいるから確実にバレる。」
パンダ「大丈夫大丈夫、ひまわりに紛れればいける。」
真希「お前の図体で?」
パンダ「失礼な。ひまわりとパンダ。結構相性いいんだぞ。」
ぶつぶつ言いながらも、
パンダは器用に身を低くして前進し始める。
がさ、がさ、とひまわりが揺れた。
真希「いちいち音がデけぇんだよ!」
パンダ「静かにすると逆に怪しいって。」
真希「んだよ、それ、初めて聞いたわ。」
呆れながらも、結局真希も後を追う。
二人はひまわりの影を渡るようにして、
じりじりと休憩所へ近づいていった。