第5章 記憶×記録
そして、ひとしきり話した後。
乙骨は少し照れたように笑う。
乙骨「……だからさ。」
「?」
乙骨「今度、僕の友達もぜひ紹介させてよ。」
夏風が、二人の間を柔らかく吹き抜けていく。
乙骨は少しだけ目を細めた。
乙骨「みんな、会いたがってるよ。」
「ありがとう、あの、、、もし、的外れなこと言ってたら本当に恥ずかしいんだけど・・・・」
風鈴が、ちりん、と小さく鳴る。
それから少しだけ間を置いて、ゆっくり乙骨を見上げた。
「私は、乙骨くんの・・・」
そこまで言いかけた瞬間。
呼吸が、ふっと止まる。
脳の奥を何かが掠めた。
指先が触れる感覚。
優しい声。
名前を呼ぶ音。
胸が締め付けられるように熱くなる。
「――っ……。」
言葉が続かない。
乙骨「・・・・僕は、さんの彼氏です。
・・・・っていっても、む、無理に思い出さなくて大丈夫ですからね?!
少しだけさみしいですが・・・
僕は大丈夫です。
次は僕が守ってあげますから。」
慌てたように続ける声が、どこか乙骨らしく。
真っ直ぐな眼差しが、蘆屋を見つめる。
胸が、強く締め付けられた。
(――違う。)
苦しいのは、記憶がないからだけじゃない。
不意に脳裏を掠めたのは、夜だった。
静かな廊下。
優しく名前を呼ぶ声。
白い髪。青い瞳。
(・・・・私は、あの日の夜・・・・五条さんに・・・。
目の前の彼は優しくて、
真っ直ぐで、
きっと自分を大切に想ってくれている人なのに。)
罪悪感みたいな熱が、じわりと胸へ広がっていく。
遠くで、風鈴がちりん、と鳴った。
ひまわり畑を吹き抜ける夏風が、熱を帯びた空気をゆっくり揺らしていく。
空はどこまでも青く、眩しいほど穏やかなのに。
胸の奥だけが、ひどく騒がしかった。
「わ、、私、/乙骨「大丈夫。」
罪悪感いっぱいで苦しそうな彼女の言葉を遮った。
乙骨「もう一度好きになってもらえるように頑張るから。
今は、友達として仲良くしてくれたらうれしいな・・・って-
・・・・あれ?」
ふと、遠くを見ると見覚えのある人影を発見する。