第5章 記憶×記録
「……きっと、こんな私とも仲良くしてくれてたのかなって。ち、違ったらごめんね!!!あははっ、、、」
乙骨は少し黙り込む。
胸の奥が、静かに痛む。
乙骨「うーん……そうですね。」
すぐには否定せず、
乙骨は少し考えるように空を見上げる。
眩しい夏空の下、ひまわりが一斉に風へ揺れていた。
乙骨「でも、どちらかというと。」
ゆっくりと彼女を見る。
乙骨「お世話をしてもらってたのは、僕の方ですよ。」
「……え?」
主人公が目を丸くする。
乙骨は小さく笑った。
本当は。
“仲良くしてた”なんて言葉じゃ足りない。
彼女は、自分にとって誰より特別な人だった。
恋人で。
守りたくて。
いまも抱きしめたくて。
乙骨は一瞬だけ迷って、言葉を飲み込んだ。
乙骨(・・・急がなくていい。)
今はまず、彼女が安心して笑える時間を作りたかった。
乙骨「前の僕、結構頼りなかったから。」
少し冗談っぽく笑いながらそう言うと、
彼女もつられるように小さく笑った。
乙骨「僕でよければ、さんの話、沢山させてください!」
「・・・!ふふっ、ありがとう」
風に揺れるひまわりの中、その笑顔を見られただけで、
乙骨は少しだけ救われた気がした。
行きついた売店の横にある小さな休憩所は、
木製の屋根が陽射しを優しく遮っていた。
風が通るたび、軒先の風鈴がちりん、と涼しげな音を鳴らす。
乙骨と蘆屋は並んでベンチに腰掛け、
それぞれ手にしたソフトクリームを見下ろしていた。
「……なんか、夏休みって感じだね」
乙骨「あはは、たしかに。」
蘆屋の口元に少しだけクリームがついているのを見つけて、
乙骨は思わずくすりとほほ笑む。
溶けかけたソフトクリームをひとくち食べてから、
乙骨は静かに口を開く。
乙骨「僕が初めてさんに会ったのはね――……。」
風が吹き抜ける。
乙骨は、記憶を探る彼女を急かさないように、
ひとつひとつ言葉を選びながら話した。
初めて会った時のこと。
呪術高専のこと。
彼女のすごいところ。
海外に行っていたこと。
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