第5章 記憶×記録
澄み渡る青空の下
ひまわり畑を柔らかな夏風が吹き抜けていく。
太陽の光をいっぱいに浴びたひまわりたちは、
空へ向かうように鮮やかな黄色を揺らしていた。
葉の擦れる音と、遠くで響く蝉の声。
夏特有の眩しさがありながら、
不思議と空気は軽く、どこか穏やかだった。
その景色の中で、乙骨はスマホの画面をちらりと確認して、
小さく息を吐く。
乙骨「……みんな、遅いなぁ。」
困ったように笑いながらも、その表情はどこか落ち着かない。
待ち合わせの時間には、まだ少し余裕がある。
乙骨(本当に、ここでよかったかな・・・。)
記憶を失う前の彼女が、残していた“行きたい場所”。
風に揺れるひまわりをみて、少し不安な思いと、期待が織り交ざる。
ふと、入口の方へ向けていた視線が止まる。
風に揺れるひまわりの隙間から、五条先生が見えた。
乙骨「あ……。」
思わず声が漏れる。
ゆっくりとこちらへ歩いてくるのは、
五条と記憶をなくした彼女だった。
夏の風に髪を揺らしながら、どこか落ち着かない様子で
五条の隣を歩いている。
対する五条は、そんな彼女を面白がるみたいに
時折顔を覗き込んでは、何か話しかけていた。
そのたびに少し困ったように笑って、小さく返事をする可能。
乙骨(――なんだろう。)
乙骨「・・・・。」
並んで歩く姿は、まるで初々しい恋人同士みたいで。
乙骨の胸が、ちくりと痛んだ。
乙骨(……ああ、やだな。
そっか、僕、やきもち妬いてるのか。
自分でも子供っぽいと思う。
記憶を失っているさんにとって、
今、一番傍にいる時間が長いのは五条先生だ。
不安な時に頼ってしまうのも、安心して笑うのも、きっと自然なことで。
頭ではちゃんと理解している。)
乙骨「……仕方ない、よね。」
誰に聞かせるでもない声が、夏の風に溶けていく。
・
・
・